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2010年6月22日 (火)

本【暗黒童話/乙一】

暗黒童話/乙一

事故によって左目の眼球と、今までの記憶を同時に無くした菜深。
記憶をなくし、別人のような人格で目覚めた菜深は、
周囲から以前の明るく活発な菜深と、今の内向的な自分を比べられ、次第に居場所を失ってしまう。
そんな時に眼球の移植(角膜じゃなくて眼球)が決まり、
新しく左目にはまった眼球が時折覚えのない記憶を映し出す。

眼球の前の持ち主は和弥という男の子だという事が映像の中から解るが、
和弥はある事件に巻き込まれて命を落としていた。

好きな作家の一人、乙一の長編。

まず、物語の最初と間に「アイのメモリー」という、劇中にも本が登場する童話が入っていて、
それが黒くて良いです。カラスと女の子と眼球の繰り広げる、エドワードゴーリー的なファンタジー。
まさに暗黒童話!
これだけでも結構満足。
こういう絵本を期待されていたのではないか。
(実際に出版された乙一の絵本「くつしたをかくせ」は正直微妙だったが、絵が綺麗だったので許した)
絵本が付いた新装版とかが出たら、買っちゃうよ。
漫画MONSTERのなまえのないかいぶつ (オススメ!)みたいに、どうかひとつ……。


本編の方は、始めのうちは乙一得意の不安と劣等感が書かれています。
記憶を無くす前の菜深ができたこと、周囲が期待することができなくなった菜深。
家族や友人の反応が辛い。
前が出来た子だっただけに、周囲が勝手に期待して失望する。

知らない自分が優等生って嫌ですね。
自分は生まれたときから落ちこぼれてて良かった!

いや、良くはないか……。

中盤からは和やかながらもミステリー。
和弥の住んでいた町に出掛け、左目が見ていた人々と出会いながら事件の真相を探る。

しかけに騙されつつも、読み終えた時には自分自身が消滅してしまったかのような錯覚を感じてしまうほどのめりこんでいました。
記憶喪失で空っぽの状態から始まったので感情移入しやすかったのかも。

そんなわけで本編は良いんだけど、
物語の余韻を感じている所に、いつもの調子でふざけた作者あとがきをみたら微妙な気持ちになりました。

本編の中で沢山の人が亡くなり、その命や記憶を考えさせられ、しみじみした所で、
作者自身が「道で転んでトラックにひかれるところでした。いっそのことひかれてしまえばよかったのに」
とか「死にたくなる」系を連発。
自分真面目(w なんで、さすがにちょっと笑えませんでした……。
というか、年をとると死に絡んだギャグで笑えなくなってくる。

本文と関係ないあとがきなので、先に読んでおけば良かったのかな。

概ね満足だけど、たまに台詞とかの文章が読みにくいかも。
「首を横に振る」の使い方が変なような気がするが……どうだろう。

あと、多少(?)グロいので、苦手な人は注意が必要。

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