本【第二怪奇小説/遠藤周作】
第二怪奇小説/遠藤周作
9編を収録した短編集。
ちょっと頭の良い人なら気が付いているかもしれないが、“第二”と付くだけあって二作目である。
今さっき検索しては初めて知ったんですけどね。
一作目の「怪奇小説集」は幽霊的な怖い話が収録されているようで実に面白そうだ。
今回読んだ「第二怪奇小説集」では人の心の内面や、偶然が醸し出す奇妙さを書いている。
怪奇とは少し違った感じがするが、お話自体は楽しめた。
「ジャニーヌ殺害事件」
フランス・リヨンの下宿先に程近い場所で、寂れたパン屋を営むイボンヌと幼い娘ジャニーヌ。
霧深い町で起きた陰惨な事件。
タイトルの通り、ジャニーヌが殺されるお話。
これは実話なんでしょうか。
wikiを見たら、実際にリヨンの学校に行ってるみたいだけど……嫌だなぁ。
ちなみに、ジャ○ーズ事務所とは何の関係もありませんよ。
なぜかギャグ小説と思って読んだら……しょんぼり。
「共犯者」
夫に癌の疑い。その時妻は……。
「幻の女」
古本屋で手にした小説に書き込まれていた女の名前と住所、
そして、小説の中に出てくる毒薬の名前に引かれた鉛筆の線。
書かれた住所を頼りに探ってみると、女は夫と姑を亡くして最近引っ越したという。
中古の本やゲームに名前が書いてあったり紙切れが入っていたりという事は偶にありますが、
実際にはなんでもないような事でも結構気になったりしますよね。
「幻の女」では、本に書き込まれていた住所が自宅に近かった事から始まって、
見知らぬ女への幻想と疑惑を募らせるお話。
ちょっと悪趣味な探究心。面白い!
「偽作」
再婚で迎えた妻が小説の賞を取る。しかし、なかなか次の作品が仕上がらない妻
の口から告げられたのは、小説が買い取って写した“偽作”であるという告白だった。
「女って、あなたが考えているより……」
前妻の遺した言葉の意味とは。
読み終えた時うぁ……って暗い気持ちになります。
「憑かれた人」
調べ物に取り憑かれた老人の末路。
「蟻の穴」
故郷の道で蘇る
過去の、自分しか知らない物語。
じっとりべたべた自分の内側にある恐怖。
「人食い虎」
血を流した虎は人食いになる!byインド
「口笛を吹く男」
壁の薄いアパートの一室、隣の部屋で浪人生が吹く口笛が聞こえてくる。
浪人生を弟の姿と重ねた女は、浪人生を気に掛けるが……。
クワイ河マーチの口笛って結構難しい。しかも壁の薄い部屋で一人で吹くなんてねぇ。
「娘はどこに」
ホテルの隣の部屋から泣き声が聞こえる。
後に知り合った隣の部屋に泊まっていた外国人男性は、戦争で生き別れた娘を探しているという。
テレビ番組の協力で娘を探し出すことになるが……。
良い話……と見せかけて!
全体的に派手さはないけど、じっとり重い空気、探究心、というか好奇心?がやたらとリアルで面白かった。
「幻の女」「偽作」「蟻の穴」が特に、短くてスパッと終わる小説ですが、なんとなく頭に残る話でした。
楽しい気持ちではないワクワク感が堪能できる一冊。
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