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2012年8月12日 (日)

わくらば日記/朱川 湊人

わくらば日記/朱川 湊人

連作短編五本収録

大人になった主人公の和歌子が、姉との思い出を語るという形で綴られている。
姉の上条鈴音は、人や場所の記憶をビデオのように見る事ができる不思議な能力がある。
妹の和歌子が口をすべらせた事から、能力を知った刑事に協力を頼まれる。

ちょっと辛い(切ない)系統の話が多くて
角川の紹介に書いてある「ほっこり小説」はちょっと違うんじゃないかな……。
浅田次郎の小説によくある人情鬱な感じに近い。
去年の夏の冊子で浅田次郎の『霧笛荘夜話』も「楽しむ」カテゴリーに入っていたが、
どんな心を持っていたらあれを楽しく読めるのだろうか

こちらも「楽しむ」カテゴリーの『わくらば日記』
著者の朱川湊人お得意のノスタルジーな昭和の風景の中に
姉の能力で殺人事件の捜査に協力する、といった非現実的な要素も入った微ホラーファンタジー。
昭和の出来事や流行歌を絡めて舞台を作るのが上手いです。

雰囲気は良いんだけど、微妙に後味悪い話も多かった。
とはいえ、連作短編なので、登場キャラが同じな分親しみがわきやすいかな?
早い段階で姉が若くして亡くなっている事が知らされるのでやっぱり暗くなる。
心のやさしい姉が陰惨な殺人現場を見て苦しんだり、とかも辛い所。

“姉さま”こと上条鈴音は、優しくて、見た目も外人さんのように綺麗で、
不思議な能力があってもちろん勉強もできて、欠点は病弱なところ。
……なんともすごい設定。
体が弱いこともあり、能力を使うことにあまり積極的でなく
妹の方が事件捜査などに関わるきっかけを作るのだが、
「能力の事は人に言わないように」と姉から言われたにもかかわらず
人助けをダシに男の気を引くためにさらっと秘密を漏らして、
結果人助けの方も大きなお世話に終わるという……ある意味救いがない。

しかし姉の方もその後の話で、好きになった男の前で能力を使ってたので
まあ、そういう姉妹なんでしょうか。
四話目の話は切ない初恋モノで、良いんですけど、
三話で“姉妹同然”とまで称した友人が犯罪に関わっていた過去があるかも……
という時には出し惜しみした能力、すぐ次の話では男の前で簡単に使うんだ、的な、ね。
それは置いといて、四話目が一番好みの話ですけどね。
大層な殺人事件や社会問題より、こういう地味な話の方が似合ってる気がする。

これがシリーズ一作目で、続編も既に出ているようですが、
メインの話は短編ごとに完結しているのでそれほど問題はないものの
最後に、あるキャラの不幸を匂わせる発言をして「それはまた今度」(続編読んでね)
みたいなのがモヤっとして嫌だなー。
どちらかと言えばハッピーエンドが好きで、
架空の話でも可哀想なのはあんまり……なので続編は読まなくても良いかな。

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